この記事では、「ビットコイン担保型の証券とは何か?」をテーマに、
アメリカの企業マイクロストラテジーが実際に発行している高配当の優先株を例に、仕組みやリスク、そして日本での可能性まで掘り下げていきます。

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【参考資料】
上場制度(優先株等) (JPX)https://www.jpx.co.jp/equities/products/preferred-stocks/listing/index.html
「マイクロストラテジーの永久優先株に機関投資家マネー流入の可能性」アナリスト予測https://coinpost.jp/?p=585635
ビットコイン購入強化目指すストラテジー社、永久優先株で最大3兆円調達へhttps://coinpost.jp/?p=601387
8週連続でビットコイン買い増し ストラテジー社、新たな優先株式発行もhttps://coinpost.jp/?p=622212
ストラテジー社、ビットコイン追加購入のため500万株の永久優先株発行を計画https://coinpost.jp/?p=603081
マイケル・セイラーのストラテジー社が新優先株発行、約10億ドル調達でビットコイン購入資金確保へhttps://coinpost.jp/?p=623398
ストラテジー社、9億7970万ドルの優先株式公募を価格決定https://jp.investing.com/news/company-news/article-93CH-1139646
Strategy Announces $2.1 Billion STRF At-The-Market Programhttps://www.businesswire.com/news/home/20250522766827/en/Strategy-Announces-%242.1-Billion-STRF-At-The-Market-Program
メタプラネット社 奥野氏ポストhttps://x.com/Shinpei3350/status/1931532649883181420
動画版はこちらです。
そもそも優先株とは?普通株との違い
株式には大きく分けて「普通株」と「優先株」の2種類があります。
私たちが一般的に目にするのは「普通株」です。
普通株には経営に関する議決権があります。つまり、「この会社はこうしたほうがいい」と株主総会で口を出す権利があるということです。
一方で、配当金が必ずもらえるわけではなく、企業の方針や業績によって変動します。
※補足
実際に普通株を保有していると、議決権行使書類が郵送で届きます。そこに記載されている選択欄が、経営への“口出し”の部分です。
それに対して「優先株」は、議決権が基本的にありません。
つまり経営に口を出すことはできませんが、その代わりに配当や残余財産の分配については普通株より優先される仕組みです。
わかりやすく言えば、
「経営には口出ししないけど、ちゃんと配当はもらえるよ」という立場です。
マイクロストラテジー社の挑戦とは?
アメリカの上場企業「ストラテジー社(旧マイクロストラテジー、MSTR)」は、2025年6月時点で世界最多となる約58万枚のビットコイン(BTC)を保有しています。
その膨大なビットコインを担保に、年利8~10%の高利回りを誇る優先株を発行しました。
これが「BTC担保型の利息付き金融商品」として、投資家の間で注目されています。
重要なポイントは以下の通りです。
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普通株には配当はない(MSTRの場合)
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配当があるのは優先株のみ
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ビットコインを担保にした高利回りの仕組み
優先株3種類の内容
銘柄 | 年利 | 概要 |
---|---|---|
STRK | 8% | シリーズAの永久優先株。1株100ドル。配当は累積型。BTC購入や運転資金に使用 |
STRF | 10% | 四半期ごとに現金配当。未払いには複利も発生。1株100ドル |
STRD | 10% | 公募価格85ドル。配当は四半期後払い。2025年6月10日決済予定 |
いずれも「永久優先株」と呼ばれ、満期はなく、配当が継続的に得られる仕組みです。
スキームの全体像
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投資家が資金を出す
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MSTRが優先株を発行(8〜10%の利回り)
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得た資金でBTCをさらに購入
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BTC保有量が増え、資産価値が上がる
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その担保価値をもとに配当を支払う
つまり、「BTCを担保にして、資金を調達し、その資金でまたBTCを買い増す」というサイクルです。
なぜ注目されているのか?
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銀行の普通預金金利が年0.01〜0.02%程度の中、MSTRの優先株は年8〜10%
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上場企業が発行
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BTCという裏付け資産がある
このような特徴から、「安全性が高い高配当商品」として見られることもあります。
優先株のリスクとは?
一見魅力的なMSTRの優先株ですが、リスクも存在します。
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議決権がない
→ 経営に対する発言権はゼロです。 -
配当条件が異なる
→ 「累積型(STRKなど)」と「非累積型(STRDなど)」があり、未払い配当の扱いが異なります。 -
価格リスクがある
→ 優先株自体の価格が下落することで、利回りが変動したり、元本損失の可能性もあります。 -
BTC価格の下落リスク
→ 担保となるBTCの価値が落ちると、MSTRの信用力に影響。配当継続が難しくなるリスクも存在します。 -
ストラテジーの関連記事はこちらです。
配当の原資はどこから?
「ビットコインの運用益で配当が出ているの?」と思われがちですが、実態は異なります。
配当の原資は、「優先株の売却によって得た新たな資金」です。
つまり、
「毎月家(=BTC)を担保にお金を借りて、そのお金から配当を払っている」構造です。
MSTR自身はBTCを売却しておらず、配当はBTCの運用益でも純利益でもありません。
この仕組みを理解するには、「ATM(At-the-Market)」という手法が鍵になります。
ATM(At-the-Market)とは?
ATMとは、「市場に少しずつ株を売却しながら、資金を集めていく手法」です。
MSTRはこの方法で優先株を発行し、集めた資金で配当を支払っています。
このモデルは一種の「資産担保型資金調達モデル」であり、株式を売るごとに現金が得られ、それを配当に回せる仕組みです。
ただし注意点として、
この仕組みは“次の出資者”が現れなくなると破綻する恐れがあるということです。
例えるならば、「年金の賦課方式」に近いです。
新たな納付者が減ると、支給が立ち行かなくなる構造と似ています。
※MSTRの優先株はどこで買えるの?
MSTRが発行する優先株(STRK・STRF・STRD)は、いずれも米NASDAQ市場で取引可能です。
ただし、日本の証券会社(例:楽天証券)では取り扱いが確認されていないため、購入には米国証券口座の開設が必要になります。
なぜ日本では同じことができないのか?
日本にも「優先株」の制度は存在しますが、活用例はほとんどありません。
理由は以下の通りです。
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上場のためのルールが厳格で、条件が複雑
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法制度が古く、新しい金融商品への対応が遅れている
たとえば、現在上場している日本の優先株としては「伊藤園第1種優先株(証券コード25935)」などが挙げられます。
しかしその数は非常に少なく、新しい形の“BTC担保型優先株”のような商品が登場するには高いハードルがあります。
簡単に言えば、
「優先株という新しいタイプの車が、日本の“金融道路”では走れない状態」なのです。
まとめ
ビットコイン担保型の優先株は、金融の新たな地平を切り開く商品として注目されています。
とくにマイクロストラテジーのような企業が率先して仕組みを導入することで、今後は日本にも同様の波が来る可能性もあるでしょう。
しかし、利回りの高さの裏にはそれ相応のリスクが存在することを忘れてはいけません。
投資判断は慎重に。情報をよく吟味して、自分の投資スタイルに合った判断をすることが大切です。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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