2014年、仮想通貨業界に衝撃が走った――
それが「マウントゴックス事件」です。
日本の東京都に拠点を構え、当時、世界最大級のビットコイン取引所であったマウントゴックス社のサーバーが何者かによってハッキングされ、ビットコイン(BTC)と預かり金、当時のレートで約470億円相当が消失…!
ゴックス…GOX…という、資金を預けている仮想通貨取引所がハッキングなどの被害に遭い、仮想通貨を失ったり引き出せなくなったりすることをいう業界用語の発端となったこの事件。
多くの投資家が困惑し、仮想通貨の安全性や信頼性を揺るがす一件となりました。
利用者や債権者にとっては心苦しい事件ですがこの事件をきっかけに、金融庁が仮想通貨業界の規制に本腰を入れ始めました。
「日本でもうこんな事件は起こさせない!!」という決意か、
仮想通貨の法整備が進み、投資家保護の重要性が再認識されたのです。
2016年には資金決済法の改正など、暗号資産に係る法制度の整備が進みます。
正式な名称も仮想通貨から暗号資産に変更され、この新しい資産とどのように向き合っていくのかが考えられました。
この記事では日本の取引所・マウントゴックス事件とは何か?ビットコイン史上最大のハッキング事件を解説し、その影響と教訓を探ります。
この事件の全貌と、その後の暗号資産市場への影響、暗号資産の安全性と信頼性について紐解いていきましょう!
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マウントゴックス事件とは何か?
事件の発端と経緯
さて、そもそも「マウントゴックス事件」とは何?と疑問に思う方もいるでしょう。
これは、暗号資産界隈のハッキングに関する一丁目一番地。忘れられない大事件なのです。
2014年、日本を拠点にしていた世界最大級の暗号資産交換業者、マウントゴックス(Mt.Gox)がハッキング被害を受け、巨額のビットコイン(BTC)が盗まれました。
その額、なんと470億円相当!
©ドラゴンボール / 鳥山明 / 集英社
この事件で、約13万人もの顧客が被害を受けました。
実は2011年からマウントゴックスはハッキングをされていましたが、“なぜか”それは公にはされませんでした。
ハッキングの事実が発覚したのは2014年2月です。
この公表を機に、マウントゴックス社はビットコインの出金を停止し、同月末には東京地裁に民事再生手続開始の申立てを行いました。
この顛末はニュースとして大々的に報じられ、マウントゴックス社の経営破綻が広く知られることとなりました。
この事件を受けて、暗号資産市場は大混乱します。ビットコインの価格は急落し、投資家たちはパニックに陥りました。
皆さんも自分のお金が突然消えたらびっくりしますよね?
当時のは2014年はビットコインが誕生してまだ5年ほどの時期でした。
仮想通貨はハッキングされる、流出するということ自体がまだ多くの人に知られていませんでした。
2014年の破産から1年後、2015年8月には同社の元CEOマルク・カルプレス氏が逮捕されました。
一部預かり金の横領などの罪が疑われたのです。2016年に保釈されたものの、この逮捕によって、暗号資産全体のイメージは大きく失墜しました。
事件の大まかな時系列
ご参考までに事件のおおまかな時系列を紹介します。怪しいんですよ、この事件が…
2009年:ジェド・マケーレブ氏がマウントゴックスの前身となるマジック:ザ・ギャザリングの交換所を設立
この会社の名前 MTGOX こちら、もともとは「Magic: The Gathering Online eXchange」の略です。
元々は世界中で大ヒットしているトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」の交換所として2009年に設立されたのです。
しかしこのカード交換所がビットコインの交換業者に転身したのは2010年のことです。
創設者のジェド・マケーレブ氏がビットコインの可能性に気づいたことがきっかけでした。
2011年:マルク・カルプレス氏に事業を売却
その後、2011年にマルク・カルプレス氏に事業売却された後、マウントゴックスは急成長を遂げます。マルク・カルプレス氏は経営手腕があったようです。
2013年には、マウントゴックスは世界のビットコイン取引量の70%を占めるまでになりました。これは驚きですね!
しかし、そんな輝かしい成功の裏で、悲劇の種がまかれていたのです…
2011年6月19日:ハッキング被害を受ける。被害額は870万ドル以上。
実は2011年の時点でマウントゴックス社はハッキングによって875万ドル以上の被害を出していました。さらに、2012年から2013年にかけては、同社が資金の払い込みのために利用していた日本や海外の口座が凍結されています。
しかし2011-13年まではこの事実は公にされていませんでした…
2014年2月7日:マウントゴックスはシステム障害を理由に全てのビットコインの払い戻しを停止。
2014年2月28日:マウントゴックス、民事再生法適用申請を開始。このタイミングで事件が公になりました。
2014年4月24日:破産手続きが開始されます。
2015年8月1日:元CEOマルク・カルプレス氏が顧客の預かり資産を横領した疑いで逮捕されます。
2018年6月22日:マウントゴックス、破産手続きから民事再生法手続きに移行。
その理由はマウントゴックス社が破綻当時に保有していたビットコイン(BTC)の価格が上がり、保有資産が2000億円以上になったためでした。
さて、この事件、何か怪しくありませんか??
2011年にハッキング被害を受けていたにもかかわらず、事件の公表は2014年…
CEOマルク・カルプレスの関与の真相
この事件がさらに注目を集めたのは、元CEOのマルク・カルプレス氏の逮捕劇です。
日産のカルロス・ゴーン氏に並んで、外国人経営者の2大汚職事件?かもしれません!?
さてこの事件、何か怪しくありませんか?
2011年にハッキング被害を受けていたのに、事件の公表は2014年。どうしてこんなに時間がかかったのでしょう?
事件当初は、シンプルに「ハッキングされてしまいました!」と発表されました。
しかし、捜査が進むにつれて「ん?ちょっと待てよ?」という不審点が次々と出てきます。
カルプレス氏の口座がやたらと増えていることが発覚したのです。
2015年8月1日、警察はついにシステム不正操作の疑いで彼を逮捕。
その後、ユーザーの預かり金を着服した疑いで再逮捕される事態に。
©ジョジョの奇妙な冒険 / 荒木飛呂彦 / 集英社
しかしカルプレス氏は一貫して「俺は無実だ!」と主張します。
メディアや法廷でも、謝罪はするものの、横領を認めることはなかったんです。
2017年7月11日の初公判でも彼は無罪を主張し、起訴内容を全部否定。
そして、2017年7月26日、ついにマウントゴックス社のシステムにハッキングした疑いでロシア人男性が逮捕されました。「こいつが真犯人だ!」と世間は大騒ぎとなりました。
そして2019年3月、カルプレス氏は事実上の無罪判決を勝ち取りました。
ただし横領については無罪となりましたが、2021年に私電磁的記録不正作出・同供用罪で有罪が確定しました。(懲役2年6月、執行猶予4年が確定)
結果、マルク・カルプレス氏は私電磁的記録不正作出・同供用罪以外については無罪を勝ち取りました。
なお、2019年に無罪判決を勝ち取った後、仮想通貨3.0という書籍を出版しています。
書籍PR・仮想通貨3.0 /
2019年)
経営破綻からの復旧プロセスと弁済
続いて、マウントゴックス事件が発生してから、顧客への弁済について深堀してみましょう。
事件発覚後、マウントゴックス社はビットコインの取引を停止し、東京地裁に民事再生手続を申し立てました。
しかし、事態はそれだけでは収まりませんでした。
破産手続きに移行することが決定され、2014年4月には破産手続きが正式に開始されました。
破産管財人に任命されたのは小林信明氏です。彼はこの困難な状況の中で、債権者への弁済プロセスを進める責任を負いました。
ここで一つ質問です。もしあなたが小林氏の立場だったら、どのようにしてこの巨大なパズルを解決しようとしますか?
小林氏は「安全かつ信頼性の高い返済手続きを確保するために長い時間を要した」と述べており、その苦労は相当なものだったでしょう…破産計画に基づき、債権者への弁済は基本弁済、早期一括弁済、中間弁済と段階的に行われることになりました。
そして、ついに2024年10月31日までに弁済を完了させることが目標とされました。(2024年6月時点)
そして、2024年6月に弁済に関して進展がありました。2024年の7月初めから、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)の返済が開始されるとの発表があったのです。
参考:2024/06/24 COINPOST マウントゴックス、7月初旬からビットコインとビットコインキャッシュの弁済開始を発表
2024年7月5日には一部の仮想通貨取引所を通じて、債権者に対してビットコイン(BTC)およびビットコインキャッシュ(BCH)による弁済を行われました。
参考:2024/07/05 COINPOST マウントゴックス、10年越しに債権者へのビットコイン返済を実施
こちらを受けて、相場は急落しています。
参考:2024/10/12 コインテレグラフジャパン マウントゴックス 債権者への弁済期限を2025年10月にまで延期
弁済プロセスは、ビットコイン価格へのさらなる影響を懸念させる状況となっており、7月末時点で5万9000BTCが債権者に弁済されました。市場では、これらのビットコインが売却されることで価格が下落する可能性が引き続き議論されています。
その後、2024/10/12ののリリースでは、破綻した仮想通貨取引所マウントゴックス(Mt.Gox)は、債権者への弁済期限を1年延期し、2025年10月31日とすることを発表しています。
マウントゴックスの公式発表によれば、「弁済を受けるために必要な手続が未了であり本件弁済を受領できていない再生債権者が未だ多数存在する」ということです。
弁済による暗号資産市場への影響
2024年6月にビットコインやビットコインキャッシュでのマウントゴックスの被害金額の返済が発表されたことで、どのような影響があったのでしょうか?
市場ではビットコインとビットコインキャッシュ暗号資産が急落しました。
そう、まさに「売り圧力の売り圧力」がかかってしまったのです。
「7月に弁済されるなら、みんな売るんやろうな。それなら先に売っておこう?」という感じでしょうか。
2024年5月には、マウントゴックスが保有する141,686 BTCの送金が確認され、市場はさらに敏感に反応しました。
ビットコインの価格は下落し、投資家たちにとってはヒヤヒヤです。
被害者の心労を思う
このように、マウントゴックス事件の弁済プロセスは市場に多大な影響を与えています。
また名前から誤解されることが多いですが、「マウントゴックス」は日本の取引所です。
そのため、被害者の多くは日本人の方です。
この状況は投資家にとっては一時的な波乱ですが、長らく返済を待ち続けていた被害者にとっては朗報でもあります。
被害者の方たちは所有していた6-8割以上のビットコインを失っただけでなく、10年間強制的に保管させられてしまっていました。
当時の精神的なストレスと悔しさは今も消えないでしょう。
もちろん、破綻後に全財産がなくなったと思って絶望していたら、10年後に価格が上がった状態で返還されるという予想外の喜びもあるかもしれません。
返還された債権者がビットコインを売却したいと考えるなら、下落圧力になるとしても、市場は受け入れるべきだと感じます。
マウントゴックス事件から得られた教訓
マウントゴックス事件は、投資家にとって大きな教訓となりました。
この事件をきっかけに、暗号資産の安全性や信頼性が再評価されるようになったのです。
市場は一時的に混乱しましたが、その後の回復過程で多くの投資家がビットコインやブロックチェーン技術の堅牢性を再認識しました。
ビットコイン自体には問題なく、管理対策が重要
マウントゴックスの事件で価格を下げたビットコインや仮想通貨市場ですが、時間が経つにつれて、価格は徐々に回復していきました。
これはなぜでしょう?
それは、ビットコインそのものの仕組みには問題がないと判明したからです。
ハッキングや流出の問題は、マウントゴックス社の管理体制にあったのです。
例えば、マウントゴックス社はセキュリティの基本とも言える多要素認証を適切に導入していませんでした。まるで、家の鍵をかけずに外出するようなものです。
これにより、ハッカーは比較的簡単にシステムに侵入し、ビットコインを盗むことができました。
その後、暗号資産業界は一時的な混乱を乗り越え、再び成長の軌道に乗りました。
当時の主要交換業者も共同声明を発表し、マウントゴックス事件はあくまで同社の問題であり、ビットコイン自体の問題ではないと強調しました。
その後、ビットコインなどの暗号資産を安全に保管することの重要性が認識されました。
マウントゴックス事件は、暗号資産取引の安全性について多くの教訓を残したのです。
法整備の必要性
金融庁、動く…
この事件を受けて、日本では暗号資産に関する法整備が進みました。
暗号資産交換業者に対する規制が強化され、暗号資産の取引を業務として行う事業者には金融庁の登録が必要となったのです。これにより、投資家保護の観点からも大きな進展がありました。
さらに、自主規制団体である一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)にも加入が義務付けられました。(とても高い年会費がかかりますが…)
これにより、業界全体の透明性と信頼性が向上します。
(ただし、2019年にはコインチェック、2024年にもDMMビットコインとハッキング・流出事件は根絶していません…)
また、この法規制については「厳しすぎる」との声もあります。自由な発展が阻害されるという事態にもなっているため、規制と自由市場の発展のバランスを取ることが今後の課題となるでしょう。
投資家の責任とリスク管理
そして最後に、投資家自身のリスク管理の重要性です。
マウントゴックス事件は、暗号資産の取引におけるリスクを明らかにしました。投資家は、自分の資産をどこに預けるか、どの取引所を利用するかを慎重に選ぶ必要があります。
また、分散投資の重要性も再認識されました。
当サイトでも金融庁認可の暗号資産取引所を照会しています。
一つの取引所や一つの資産に全てを託すのは危険です。投資の際にはリスクを分散させ、自己責任で判断することが大切ですね。
マウントゴックス事件は、暗号資産市場にとっての大きな教訓となり、業界全体の成長と進化を促しました。
この事件を通じて学んだことを活かし、より安全で信頼性の高い市場を築いていくことは、私たち全員の課題ですね。
ゴックスという用語の由来
実は、「マウントゴックス」には面白い小話があります。
暗号資産の用語である「ゴックス (GOX)」という言葉は、2014年のマウントゴックス事件から派生した用語です。
この事件以降、「GOXする」とは、暗号資産取引所が外部からのハッキングや技術的な問題により、ユーザーの資産が失われたり、引き出せなくなったりすることを指します。
一方、「セルフGOX」とは、使用者自身の過失によって仮想通貨を失うことを意味します。例えば、誤ったアドレスに送金してしまったり、セキュリティの設定ミスにより資産を失うことが含まれます。
これらの用語は、仮想通貨取引のリスク管理を意識する上で重要な役割を果たしており、投資家や利用者にとっての警戒すべきポイントになっています。
マウントゴックスの事件はこんなところにも影響があるのですね。
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
関連記事もあわせて、暗号資産の安全な管理について学んでいただければ幸いです。
仮想通貨のハッキング・流出事件と対策|投資家が知るべき暗号資産投資の基本
参考記事はこちらです。
DMMビットコイン:マウントゴックス事件とは?ビットコインが消失した事件の全貌を知る
コインチェック:マウントゴックス事件の全貌と暗号資産(仮想通貨)の安全性を見極める3つのポイント
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
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