最高値圏で推移する金価格を背景に、金投資への関心はさらに高まっています。
そんな「金(GOLD)」への投資方法には、現物の金地金、金地金ETF、金鉱山株ETFなど、いくつかの選択肢があります。
ただし、金現物、金地金ETF、金鉱山株ETFは、同じ「金」をテーマにしながらも、性質は大きく異なります。本記事では、それぞれのリスク、税制、為替の影響を投資家目線で整理していきます。
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投資のスタンス別の使い分け
金地金の現物は、盗難や保管場所の問題から、自宅での管理が難しい側面があります。
そのため、実物を持たずに投資できる金地金ETFや金鉱山株ETFが注目されています。
たとえば、SPDRゴールドシェア(GLD)は、金地金ETFの代表的な存在です。
投資家は、実物の金塊を裏付けとした信託の受益権を売買する形で金に投資します。
金地金ETFは、金の価格変動を手軽に取り込める点が特徴です。
現物の保管や輸送を意識する必要がなく、管理の手間を抑えられるメリットがあります。
一方、金鉱山株ETFの代表例であるVanEck Gold Miners ETF(GDX)は、金を採掘する企業の株式に投資します。
ニューモントやバリック・ゴールドなど、世界の主要な金鉱山会社が組み入れられています。
そのため、金価格だけでなく、企業の業績や株式市場の影響も受けます。
積立NISAなどで長期運用を考える場合、これらの違いを理解したうえで使い分けることが重要です。
具体的な使い分けの考え方
**金地金ETFは「守りの資産」**です。
インフレや地政学リスクなど、有事に強い性質があります。
金そのものの価格に連動するため、株式市場が下落する局面でも、比較的安定しやすい傾向があります。
配当はありません。
円建てで見ると、過去10年の年率平均リターンはおよそ4〜5%程度とされています。
円安の影響を含んだ数値ではありますが、株式より控えめな一方、資産を守る目的には有効です。
**金鉱山株ETFは「攻めの資産」**です。
金価格が上昇すると、企業利益が拡大し、株価が大きく上がる可能性があります。
一方で、金価格が下落すると、それ以上に大きく値下がりする傾向もあります。
金価格だけでなく、原油価格や人件費などの採掘コストにも影響を受けます。
さらに、株式市場全体の動きにも左右されます。
株式として扱われるため、年0.5〜1%程度の配当が期待できます。
長期では年率3%前後のリターンとする試算もありますが、値動きは非常に大きく、S&P500の約2倍のボラティリティとされる高リスク資産です。
使い分けの考え方です。
リスクを抑えたい場合は、金地金ETFが向いています。
大きな値上がりを狙う代わりにリスクを取れる場合は、金鉱山株ETFが候補になります。
積立NISAでは、どちらもメイン投資には向きにくい資産です。
そのため、金鉱山株ETFはポートフォリオの5〜10%程度を目安に、スパイスとして組み入れる考え方が一案です。
金地金ETFは非課税メリットが小さいため、積立NISAではなく、特定口座で5%程度保有する構成も現実的とされています。
それぞれの特徴
金地金ETFの特徴
投資対象です。
実際の金地金(インゴット)を裏付けとして保有するETFです。
企業の業績ではなく、金価格そのものに連動します。
ドル建て金価格の変動に加えて、為替の影響を受けます。
円安になると、円建てのETF価格は上昇しやすくなります。
値動きの要因です。
インフレが進行する局面や、金融不安が高まる場面では資金が集まりやすい傾向があります。
安全資産としての性質が強く、株式市場が下落する局面でも比較的安定しやすい点が特徴です。
投資家にとっては、ポートフォリオを支える守りの資産と位置づけられます。
利回りと配当です。
金そのものを保有するため、配当はありません。
期待できるのは価格上昇によるキャピタルゲインのみです。
過去10年を見ると、円建てで年平均4〜5%程度のリターンとする分析もあります。
大きな成長は期待しにくいものの、資産保全には向いています。
金鉱山株ETFの特徴
投資対象です。
世界各地の主要な金鉱山企業の株式を中心に保有します。
具体的には、ニューモント、バリック・ゴールド、ニュークレスト・マイニングなどが含まれます。
GLDのように金そのものへ投資する商品とは異なり、金鉱企業の株価に連動します。
値動きの要因です。
第一に金価格の動きがあります。
金価格が上昇すれば、企業の利益が拡大しやすくなります。
第二に採掘コストです。
原油高や人件費の上昇は、利益を圧迫します。
第三に株式市場全体の動向です。
金価格と企業収益の両方が影響するため、値動きは大きくなりがちです。
金価格が上がる局面ではレバレッジ的に上昇する一方、下落局面ではそれ以上に下げる特性があります。
特徴です。
株式の一種であるため、配当があります。
年1〜2%程度が目安とされています。
ただし、値動きは非常に激しく、過去10年の年平均リターンは米ドル建てで約3%前後とする報告もあります。
株式市場が不安定な局面では、金地金ETF以上に大きな影響を受けやすい点には注意が必要です。
そのため、長期で放置する運用よりも、上昇局面を狙う短期・中期向きの資産といえます。
ETFの比較
GDXとGDXJの違い
VanEck社のGDXは、大型の金鉱山株を中心に組み入れたETFです。
運用資産残高は25億ドルを超えており、比較的規模の大きな金鉱企業が対象になります。
一方、GDXJは中小型の金鉱山株、いわゆるジュニア鉱山株を中心に組み入れています。
企業規模が小さい分、将来的な成長余地が大きい点が特徴です。
その反面、価格の変動幅はGDXよりもさらに大きくなります。
VanEckは、GDXJについて「小規模な金鉱山企業に投資するため、金価格の変動に対する感応度が高い」と説明しています。
実際に、GDXJは大手金鉱山株ETFと比べて、値動きが激しくなりやすい傾向があります。
日本の金鉱山と金関連ETFについて
日本では、かつて新潟県の佐渡島にある佐渡金山など、複数の金鉱山が稼働していました。
しかし現在、稼働中の金鉱山はごく限られています。
その代表例が、鹿児島県にある菱刈鉱山です。
菱刈鉱山では、鉱石1トンあたり約30〜40グラムの金が含まれています。
年間の産出量はおよそ7トン程度とされています。
ただし、世界全体の金生産量と比べると、日本の金鉱山の産出量は非常に小規模です。
そのため、国内で投資対象となる金鉱企業は多くありません。
金融商品としては、東京証券取引所に上場する純金連動ETF(1540)や、金鉱株連動ETF(1671)などがあります。
ただし、これらの国内ETFは、信託報酬が高めで、流動性が低い点が指摘されています。
指数に連動するETFではありますが、実質的には投資信託に近い性質を持っています。
そのため、売買コストや保有コストがかかる点には注意が必要です。
積立NISAでの位置付け
積立NISAは、あくまで長期・分散投資を前提とした制度です。
そのため、金関連資産をポートフォリオの「主役」に据える使い方には向きません。
一般的な考え方としては、
守りを重視するなら金地金ETF。
成長期待も含めて攻めるなら金鉱山株ETF。
ただし、どちらも全体の5〜10%程度を上限とするスパイス枠が現実的です。
特に金地金ETFは、価格上昇が緩やかな分、非課税メリットが相対的に小さくなります。
そのため、積立NISAではなく特定口座で全体の5%前後に留めるという考え方がバランス面ではよく見られます。
注意点(ここは必ず押さえたい)
金鉱株の高ボラティリティ
金鉱山株ETFは、金価格の2〜3倍動く局面もあります。
値動きが激しく、積立NISAの「放置前提」とは相性が良いとは言えません。
価格決定要因が複雑
為替。
金利。
原油価格。
金鉱株は、金価格だけで動く商品ではありません。
金が上がっても株価が伸びないケースは珍しくありません。
国内ETFのコストと流動性
1540や1671など国内ETFは、信託報酬がやや高めです。
時間帯によっては出来高が細る点にも注意が必要です。
分散効果の過信は禁物
金鉱山株ETFは、
「金価格リスク+株式リスク」を同時に抱えます。
株式市場が大きく崩れる局面では、分散効果が薄れる可能性があります。
投資対象の整理(イメージ)
金地金ETF
・対象:純金
・期待リターン:低〜中
・ボラティリティ:低め
・性格:守り重視、積立NISA向きではない
金鉱山株ETF
・対象:金採掘企業株
・期待リターン:中〜高
・ボラティリティ:高い
・性格:攻め重視、積立NISAでは慎重運用が必要
ポートフォリオ例と締め
一例としては、
全世界株式 約70%。
米国ハイテク株 約20%。
金鉱山株ETF 5〜10%。
金地金ETFは、特定口座で5%程度に抑える。
このくらいが、リスクと役割が整理された構成です。
金関連資産は、リターンの主役ではなく、相場の空気を変える調味料。
入れすぎない。
期待しすぎない。
その距離感が、長期投資では一番効いてくるかもしれません。








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